あなたの手元にある木のおもちゃ。実は、その歴史をたどると5000年以上前まで遡ることができます。文字が発明されるより前から、人間は木を削り、形を作り、子どもたちに手渡してきました。今回は、木製玩具が歩んできた長い長い旅を、世界史の流れとともにご紹介します。
はじまりは、文字よりも古い
おもちゃの歴史は、文字の発明よりも古いと言われています。考古学者たちが古代の遺跡を発掘すると、必ずといっていいほどおもちゃが出てきます。それほど、「遊び」は人間にとって本能的なものだったのです。
紀元前3000〜1500年のインダス文明の遺跡からは、小さな荷車や鳥の形をした笛、糸を滑り下りる動く猿のおもちゃまで発見されています。5000年前の子どもたちが、動くおもちゃで夢中になって遊んでいた——そう思うと、なんだか親しみを感じませんか。
古代エジプト:ファラオの子どもたちが遊んだ木の人形
木製玩具の歴史を語るうえで、古代エジプトは外せません。当時のエジプトは木工技術が非常に高く、カンナもノコギリもない時代に、驚くほど精巧な木製品を作り出していました。
墳墓からは、手足を動かせる木製の人形や、かつらをつけた人形が発見されています。興味深いのは、これらが単なるおもちゃではなく、「死者のともとして一緒に埋葬されるほど大切なもの」だったということ。おもちゃはすでに、子どもの人生に深く結びついた存在だったのです。
また古代エジプトのコマの遺物も残っており、円錐を逆さにしたような木製のコマが発見されています。コマは世界中で独自に生まれた玩具ですが、エジプトのものが最古のひとつとされています。
古代ギリシャ・ローマ:おもちゃを神に捧げた子どもたち
古代ギリシャとローマでも、子どもたちは木や蝋、焼き物で作られた人形、弓矢、ヨーヨーなどで遊んでいました。
特に興味深いのは、当時の「おもちゃの別れ」という風習です。ギリシャでは14歳頃の少女が結婚の前日に、子ども時代に遊んだ人形を神殿に奉納していました。成人の通過儀礼として、大切な「子ども時代の友」を神に捧げたのです。おもちゃが単なる物ではなく、子どもの成長の象徴だったことがわかります。
中世ヨーロッパ:おもちゃが「商品」になった時代
11世紀ごろから、おもちゃは市場で売買される商業製品として生産されるようになります。職人が手作りで作ったおもちゃが、市場や城で販売され、貿易でも流通していきました。
そして16世紀、おもちゃの歴史を大きく変える出来事が起きます。ドイツで木製・錫製の人形の大量生産が始まったのです。これを機におもちゃは庶民にも広まり、「子どもが遊ぶもの」として社会に定着していきました。
18世紀:「子どもの遊び」が教育として認められた時代
18世紀になると、おもちゃをめぐる考え方に大きな変化が起きます。フランスの思想家ルソーが「子どもの自然な好奇心を大切にすべき」と唱え、遊びが子どもの成長に不可欠なものとして認識され始めたのです。
そしてドイツのフリードリヒ・フレーベルが、1831年に世界初の幼稚園を創設します。彼が子どもたちに与えたのが「恩物(おんぶつ)」と名付けた木製の積み木セットでした。球・立方体・円柱から始まり、段階的に複雑な形へと進む積み木のセットは、子どもの発達段階に合わせて設計されたもの。これが世界初の「知育玩具」とも言えます。
積み木が、ただ積んで崩すおもちゃではなく、子どもの思考力や想像力を育てるものとして体系的に設計された瞬間でした。
19〜20世紀:木からプラスチックへ、そして木が戻ってきた
産業革命以降、おもちゃの製造は機械化が進みます。20世紀に入るとプラスチックが登場し、安く・軽く・カラフルなおもちゃが世界中に普及しました。木製玩具は一時、「古くさいもの」として脇に追いやられる時代もありました。
しかし21世紀に入ると、流れが変わります。子どもの五感を育てたい、安全な素材のものを与えたい、長く使えるものを選びたい——そんな親の意識が高まる中で、木製玩具が再び注目を集めるようになりました。北欧を中心に、シンプルで美しいデザインの木製玩具ブランドが世界的に人気を博し、モンテッソーリ教育や木育の広まりとともに、木のおもちゃは「現代の知育玩具」として新しい地位を確立しています。
5000年変わらないもの
古代エジプトから現代まで。素材も形もデザインも変わり続けてきたおもちゃの世界で、木製玩具だけはずっとそこにあり続けました。
手に持ったときの温かさ。コトコトという音。木目の美しさ。——こうした木ならではの感触が、5000年前の子どもも、今日の子どもも、同じように惹きつけてきたのかもしれません。
流行り廃りを超えて愛され続けてきた木のおもちゃには、きっとそれだけの理由があります。Kivokが木製玩具にこだわるのも、その長い歴史と、変わらない価値への敬意からです。